快技庵 作るは地獄男 1988年

オリジナルパッケージ開発

自社ブランドのオリジナルパッケージ「北斗」を開発

『北斗』開発

その後エスデーエンジニアリングでオリジナルパッケージソフト『北斗』を開発した。1988年のことである。

北斗(ほくと)はMacで毛筆フォントを出力するアプリケーションだ。
Macは当時英語のフォントは多くの種類があったが日本語フォントは貧弱であった。しかし本格的なフォントは小さなソフトウェアハウスがおいそれと開発できるものではなかった。ただ毛筆などのニーズとMacのグラフィック処理能力そして当時増えつつあった対応プリンタといった環境から開発を決意した。

北斗はまだMacシステムがドットのフォントであったのに対しアウトラインフォントとして開発した。それは2DD(800K)フロッピー三枚にアプリケーションとフォントデータを納める必要があったことと、高分解能のプリンタで高品質の文字を出力するためだ。
北斗のマニュアルを見るとイメージライタII、イメージライタLQ、レーザーライタII SC、レーザーライタ、レーザーライタプラス、レーザーライタII NTX、PLP-J、BJ-130Aなどの懐かしいプリンタ名が対応プリンタとして説明が並んでいる。

独自にアウトラインフォントを実現

当時ベクトルフォントと呼んでいた楷書体毛筆のアウトラインフォントは完全オリジナルだ。
実際の毛筆文字をスキャンし取り込むツールと文字を描画するロジックはエスデーエンジニアリングの塩野社長が開発した。フォント作成のツールはNECの98で動作していた。「北斗」のフォントレンダリング以外の部分すべてを高橋が開発した。

レイアウト部分と縦書き機能はいろいろと工夫を重ね実現した。
特に縦書きはMacのQuickDrawにその機能がなかったため独自に作る必要があった。そのころ横書きのエディタで擬似的に縦書きを実現するため文字が90度回転している縦書き専用フォントがあった。
エルゴソフトさんの「EGBook」などまだごく少ない国産アプリケーションでしか実現されていなかった。

北斗のアイコン

はじめての自社製品でアイコンにもこだわった。
Macのガイドラインではアプリケーションのアイコンは45度回転させた書類の上に道具を持った手のアイコンである。そこで北斗では菱形の部分を北海道にして手はペンのかわりに筆を持たせた。
筆なので立てて持ち穂先きも反対側もそれらしくした。
88hokuto2.jpg
北斗アイコン(二倍サイズ)
書類アイコンは毛筆の文字をデザインし国産ソフトであることを強調した。



88hokuto4.jpg
書類アイコン(二倍サイズ)



左から第1水準フォント、第2水準フォント、文章、配置書類。
文章と配置は北斗の機能と関係するが「配置」の文字項目に対する差し込み印刷を行う「文章」を保存していた。
第1水準第2水準とは当時の漢字セットの一般的な呼び方だ。
800Kバイトフロッピーに納めるためと扱いやすさのために分割していた。ハードディスクの容量は10M・20Mバイトが珍しくなかった時代である。

北斗 Mac OS X のClassic環境で動作!

北斗バージョン1.1(作成日89年3月1日、修正日90年1月10日)をMac OS X 10.1.2のClassic環境で動かしてみた。
見事に動作してくれた。
88hokuto5.jpg
配置ウインドウと文章ウインドウが基本の画面だ。
表示はプレビューウインドウで当然リアルタイムには表示できない。
すべて白黒のウインドウでもちろんアンチエイリアスもない。

毛筆の文字サイズは文字項目ごとにサイズの指定が可能だ。
96ポイントに指定するとこのように表示される。
88hokuto6.jpg
表示したものを印刷はもちろん、保存し他のソフトで利用できる。
文字項目は自由にマウスで移動できる。縦書き横書きも可能だ。

ガイドラインにそって作ったソフトは10年以上の歳月を経ても最新OSで動作する見本になってくれた。しかしさすがに古すぎるようで北斗終了時にClassic環境が異常終了してしまった。
それはともかく、北斗の画面を掲載できてうれしい。

もしまだ北斗をお持ちの方があればぜひダブルクリックしてみてください。

私は Performa 5430 を System 8.5 で起動しオリジナル800Kバイトのフロッピーディスクを一旦読み込み、それを1.4MバイトのフロッピーディスクにコピーしiMacに接続したUSBフロッピードライブで読み込みました。

2002.02.11加筆

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文責:高橋政明 

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